音楽関係についてのメモ

音楽関係についてのメモ、ブレインストーミング


音楽業界はCDバブル期以降、試行錯誤(七転八倒とも言える)の時期を経て、現在はかなりデジタル化している。
DXに乗り遅れているように見える日本において、これだけデジタル化によって変革著かった市場もあまりないと思われるが*1、娯楽分野ゆえに詳しく分析するのを厭う傾向があるのかその変化が十分取り上げられたとは言い難い。

年表

  • 1990年代、CDの普及によっていわゆるCDバブルが生じる
  • 1995年 Windows95発売、インターネットが普及を始める
  • 1995年 MP3の登場
  • 1998年 CD売上のピークを迎え、これ以降減少に転ずる
  • 1999年 フジロック初開催
  • 2000年 DVD視聴機能が搭載されたゲーム機、PS2が発売され、DVDの普及が始まる
  • 2001年 iPod発売
  • 2002年以降、CCCDなど違法コピー対策が図られるが失敗
  • 2003年 地上デジタル放送の開始
  • 2004年 ブロードバンドの普及率が50%を超える
  • 2004年 DVDプレーヤーの国内出荷台数がVTRを上回る
  • 2005年 ライブ市場の年間売上額が1000億円の大台を突破
  • 2005年 iTunes開始
  • 2006年頃 CCCDなど終了
  • 2007年 iPhone発売
  • 2007年 YouTube、日本語版サービス開始
  • 2008年頃? 地上デジタル放送の世帯普及率が50%を超える
  • 2008年頃 着うたフルの隆盛
  • 2008年 YouTube、720pに対応
  • 2009年頃 AKBのブレイク、握手会商法にてオリコンランキングをハッキング
  • 2009年 YouTube、1080pに対応
  • 2010年 YouTube、4Kに対応
  • 2011年 テレビは地上デジタル放送に完全移行(=高画質化)
  • 2016年 Spotify Japan サービス開始
  • 2021年 CDTVJCDが終了

これ以外

  • デジタルカメラの高画質化と低価格化。(写真、映像)
  • デジタル編集の普及と低価格化。宅録、写真集、ポスターなど
  • ネット通販の普及
  • ライブ会場の整備が進んだ
  • ネットサービス、特にSNSの普及。ファンとの接点作りが容易に。
  • 都市化の進展(1980年代と比べての話)、→ライブやフェスの開催に有利

ゆえに音源そのものからのマネタイズは難しいが、一方で費用対効果は(適切な手段が取られれば)良くなり、また顧客の側の効用の増加は著しいとみられる→これがアーティスト(特にアイドル)の寿命延長につながっている

新しいデジタルサービス等が現れるとその潮流にうまく乗ったアーティストのブレイクが見られるが、そのブレイクが長続きするかどうかは何の確証もなく、結局は総合力次第である。

全体としてテレビからネットへ、アナログからデジタル、フリーミアムロングテールへの移行が見られる。

テレビは数千万人にリーチできるが、それだけに放送枠の制約が厳しく出演は難しい。ゆえに足切りの効果があった。これがメジャーアーティストとマイナーアーティストの分水嶺となっていたし、メジャーアーティストでも人気の低下と共に足切りを受けるとすぐに活動が停滞することになる(アーティスト寿命がほぼそこに規定されてしまう)。一方でネットは少数でもリーチでき、放送枠の制約がなく出演は容易である。ゆえにメジャーとマイナーという区別もなく、長く露出を保つことができ、これがアーティスト寿命を長くしている理由の一つと考えられる。

なおテレビしかなかった時代はほぼ不完全競争(寡占的)でメジャーアーティストとなりえた人たちの天下、ネットの普及以後は完全競争で多数のアーティストが乱立することになると考えられる。それ以後の各プレイヤーの行動についてはWikipedia:競争戦略を参照。

日本市場の特殊性

  • CD再販制度の存在。ゆえにCDの価値低下に見合った価格破壊が起こらず、結果として対応する必要性も少なく改革が遅れた
  • レーベルの他に芸能事務所が存在する。360度契約は芸能事務所側の話と考えられるのでレーベルの必要性は(諸外国よりも)低くなる

「推し」と情報経済学の関係について

アーティストが「推せる」かどうかはファンの期待をアーティストがかなえるかどうかにかかっていて、かなえられた場合に「推せる」(=商品を買う)と仮定すると、アーティストが売り手でファンが買い手の市場と単純化されるので、つまりは経済学(特にWikipedia:情報経済学)の知見が使える。端的に言うと、アーティスト自らが良質(=ファンにとって高い効用がある)という情報をいかにファンに伝えるかの問題、つまりWIkipedia:情報の非対称性の解消をどう行うかという問題になる。

逆もあり、ファンの期待についてアーティストは情報劣位者にあたるので、それを超えるためになんらかの手段を用いてファンの期待を把握することが必要となる。

ネットという情報伝達手段が登場してから「推し」という言葉が現れたのは偶然の一致ではない。それだけアーティストの側が高い効用を生み出し、かつファンの側がネット等を駆使して情報の非対称性を解消することができていると信じられることによって安心して「推し」ができるようになっているからだと考えられる。

これはアーティストが個人レベルの存在で情報を把握しやすい(と信じられる)からこそ起こっていることであり、今後は規模の小さい組織から大組織の順に起きうると想定される。これは現在でもトップの個性が強いため経営方針が見えやすいと信じられる組織や、内部情報が外部に公開されている傾向が強いような組織では起こりやすいと考えられる。

関連リンク

(随時追加)

*1:純粋な情報財を取り扱うのでこうなったと言える